。「あれは三代目のオービユルンです」と農夫が答へた。
それから五六日経つて、かう云ふ話をきいた。多くの宝が異教の行はれた昔から此砦の中に埋めてある。そして悪い精霊《フエアリイ》の一群が其宝を守つてゐる。けれ共何時か一度、其宝はオービユルンの一家に見出されて其物になる筈になつてゐる。がさうなる迄には三人のオービユルン家のものが、其宝を見出して、そして死なゝければならない。二人は既にさうした。第一のオービユルンは掘つて掘つて、遂に宝の入れてある石棺を一目見た。けれ共|忽《たちまち》、大きな、毛深い犬のやうなものが山を下りて来て、彼をずたずたに引裂いてしまつた。宝は翌朝、再深く土中に隠れて又と人目にかゝらないやうになつて仕舞つた。それから第二のオービユルンが来て、又掘りに掘つた。とう/\櫃《ひつ》を見つけたので、蓋を擡げて中の黄金《きん》が光つてゐるのまで見た。けれ共次の瞬間に何か恐しい物を見たので、発狂すると其まゝ狂ひ死に死んでしまつた。そこで宝も亦土の下へ沈んでしまつたのである。第三のオービユルンは今掘つてゐる。彼は、自分が宝を見出す刹那に何か恐しい死方をすると云ふ事を信じてゐる。けれ
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