私があることにしかならないのだ。
泉ちやんは女の大人になるだらうし、猟坊は男の大人になるのだ。それは、お前達にとつてかなり面白い試みにちがひない。それだけでよいのだ。私はお前達二人が姉弟だなどといふことを教えてゐるのではない。――先頭に、お祖父さんが歩いてゐる。と、それから一二年ほど後を、お祖母さんが歩いてゐる。それから二十幾年の後を父が、その後二三年のところを母が、それから二十幾年のところを私が、その後二十幾年のところを泉ちやんが、それから三年後を猟坊がといふ風に歩いてゐる。これは縦だ。お互の距離がずい[#「い」に「ママ」の注記]ぶん遠い。とても手などを握り合つては事実歩けはしないのだ。お前達と私とは話さへ通じないわけのものでなければならないのに、親が子の犠牲になるとか子が親のそれになるとかは何時から始つたことなのか、これは明らかに錯誤だ。幾つかの無責任な仮説がかさなりあつて出来た悲劇だ。
――考へてもみるがよい。時間といふものを「日」一つの単位にして考へてみれば、次のやうなことも言ひ得や[#「や」に「ママ」の注記]うではないか。それは、「日」といふものには少しも経過がない――と
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