天井に雨漏りがしかけてきて、雨がやんだ。
次の日いくぶん眼ぶたの腫がひいてゐた。
朝のうちに陽が一寸出てすぐ曇つた。
庭の椿が咲きかけてゐた。
湯屋へ行くと、自分と似たやうな頭をした男が先に来て入つてゐるのだつた。昼の風呂は湯の音がするだけで、いつかうに湯げが立たない。そしてつゝぬけに明るい。誰かゞ入つて行つたまゝの乾いた桶やところどころしかぬれてゐないたゝきが、その男とたつた二人だけなので私の歩くのにじやまになつて困つた。私よりも若いのに白く太つてゐるので、湯ぶねを出ると桃色に赤くなつたりするのだつた。
湯屋を出ると、いつものやうに私のわきを自転車が通つた。
縁側に出て頸にはみ出してゐる髪をつんでゐると、友達が訪づ[#「づ」に「ママ」の注記]ねて来た。そして、金のない話から何か発明する話になんかなつた。
友達が帰ると、又友達がやつて来た。十二時過ぎて何日目かで風呂に入るつもりで出かけて来たのが遅くなつたと言つて、帰りに手拭と石鹸をふところから出して見せた。
あくびが出て、糊でねばしたやうに頭の後の方が一日中なんとなく痛かつた。一日が、ながい一時間であつたやうな日であ
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