れから鉄のは足首へなどといふ法律を定めたりもするのでした。又時計の定価をそれぞれ大きさや金属によつてきめなければならない重要な役もあるのですから時計会社の重い役にも就いてゐなければなりませんでした。紙屑大臣といふのは、主として紙屑やさんの取締りが役目なのです。が自分で屑拾ひに出ることもあるのです。このほかに「鼻糞大臣」これは鼻糞を乱棒に取つては衛生的でないといふので出来た大臣ですが、このほか色々の大臣がゐるのでした。つまらない大臣もあつたもんだと思ふでせうが、「紙屑大臣」だつて「鼻糞大臣」だつて高い位であるばかりではなく、金があつてもつてがなければなれないし、つてだけあつても金がなければどうにもならないのですから、なりたいと思ひながらなれずにゐるうちに死んでしまう人達だつてたくさんにゐたわけです。こんな風にして、王様自身ですることがなくなつてしまひましたが、王様がなければ大臣もないわけなのですからそこはぬけ目のない人達は、よつてたかつて王様は人ではなく、神様だといふことにしてしまひました。大臣達は、自分の思ふまゝの世の中をつくり上げると、今度はそれを保護しなければならない立場になりました。そこで色々な特種な法律をたくさんつくつて、足らなければその時に応じて又いくらでもつくることにしました。又、大臣の世襲といふことも問題になつたのでしたが、あまりよくない大臣はもつとよい大臣になつてからそれをきめた方が都合がよいと思つてゐたのでまとまらずにしまひました。
 それから、又、永い時間が経つて、さうした世の中が絶頂にゆきつくと、そこから又変な世の中の方へ動きかけました。「働らかなければ食へない」といふ男の前で「それはこのことなのか」と、餓死自殺をしてしまつてみせるのがゐるかと思ふと、「大臣」の間に党派が出来て別々に異つた名称をつけてゐたり、一部の人達が過飲過食を思想的にも避けるやうになると、たちまちそれが流行になつてしまつたり、さうかと思ふと本を読むほど馬鹿げたことはない、今までは金を出して本を買はされるばかりではなくその内容まで読まされてゐたのだが、これは向ふ[#「ふ」に「ママ」の注記]で読者へ読んでもらう[#「う」に「ママ」の注記]つぐなひとして渡す金高をわれわれが今まで仕払つてゐたあの「定価」といふところへ刷られてゐなければ嘘だ。そのほかに四五日分の日当さへ出してもらは
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