なくよそよそしい眼をするやうだった。『年寄りはきたない』さういふ冷たい眼があるやうだった。老婆は母屋へお茶に招ばれて行って、賑やかな茶飯時の一座の中でふいと水臭いものを感じた。子供が大勢でみんなてんでに笑ったり泣いたり罵ったりするにつけても、そこに親子兄妹の肉親につながるもの同士が持つ親しい解け合った雰囲気があるやうに見えた。その中にゐて只自分丈がその雰囲気から仲間外れになってゐるやうなよわい感じ……老婆はそれを屡々感じなければならなかった。
それは只気持の上のことなのだが――。
稀にみつ子が町から帰ると『隠居のおばあさまに』さう云って老婆の所へも何かしら手土産を持って来た。老婆はそれが何より嬉しかった。そしてかめよから貰って持ってゐる小遣ひを無理にみつ子に手渡してきかなかった。『おばあさまは私をまだ子供扱ひで……』みつ子は母親のかめよと顔を見合はせて笑った。
さういふ母親はたまに出逢って、話しても話しても尽きないと云ふやうに睦び合って、如何にも楽しさうに見えた、かめよは何彼につけてみつ子の噂をたのしんだ。
老婆はどっちを向いても独りぼっちだった。肉身としての深い愛情をそそぐも
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