たものでした。
 北海道のくまといえば、こんなにも縁故が深いのです。しかし、かずの子を食《た》べすぎたり、さけを落して歩いたり、猛獣《もうじゅう》ながら、どことなく、くまにはこっけいな、かわいいところがあるではありませんか。
 さて、つぎにわたしがお話ししようと思うのは、北海道にはじめて鉄道《てつどう》ができたころのことで、今からざっと四十年も前になりましょうか。その当時《とうじ》、まだ二十|代《だい》の青年《せいねん》で、あの石狩平野《いしかりへいや》を走る列車《れっしゃ》に車掌《しゃしょう》として乗りこんでいたおじからきいた話なのです。以下《いか》、わたしとか自分とかいうのは、おじのことです。
 ――なにしろ、そのころの鉄道《てつどう》といったら、人の足あとどころか、北海道名物《ほっかいどうめいぶつ》のからすさえもすがたを見せないような原野《げんや》を切《き》り開《ひら》いて通したのだから、そのさびしさといったらなかった。さびしいどころではない。すごいといおうか、なんといおうか、いってもいっても、両《りょう》がわには人間の背《せ》よりも高いあし[#「あし」に傍点]やかや[#「かや」
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