さけをほしいだけ取《と》ります。それから木の枝《えだ》を折《お》って、さけのあごへ通し、それをかついで穴《あな》へ帰ろうとするのですが、さすがのくまもそこまでは気がつかないとみえ、枝のさきをとめておかないものですから、さけは、道々《みちみち》、一つずり落ち二つ落ちして、ようやく穴《あな》へ帰ったころには、枝に一ぴきものこっていない。そうしたくまの歩いたあとへ通りかかった人こそしあわせで、くまの落したさけをひろい集めさえすれば大漁《たいりょう》になるというお話でした。
こんなふうですから、ふだんでもくまの話は、よく耳にしました。きょうは郵便配達《ゆうびんはいたつ》が、くまに出会ってあぶないところだったとか、どこどこへくまがふいにでて、飼《か》い馬をただ一うちになぐり殺《ころ》したとか、そういった話をたびたびききました。
家《うち》の父《ちち》は、新しく鉄道《てつどう》を敷《し》くために、山の中を測量《そくりょう》に歩いていましたので、そのたんびアイヌ人を道案内《みちあんない》にたのんでいました。アイヌ人は、そんな縁故《えんこ》から、くまの肉《にく》を、よく、わたしの家へ持ってきてくれ
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