ゆるんできたようだ。自分は、また、ブレーキのことを思い出して、ぞっとした。
「うううううう。」
くまはきゅうにまた、ものすごいうなり声をたてはじめた。さて、どうしたら、自分は制動室《せいどうしつ》へもどることができるであろうか?
「うわう……。」
と、一声、すさまじいうなり声をあげたと思うと、いきなりとびかかってきたくまの腹《はら》の下を、横にくぐりぬけるようにからだをなげだしたので、あぶないところで、自分はくまの爪《つめ》にかかることだけはのがれることができたのだが、さて、少し気が落着《おちつ》いてくると、おそろしさと不安《ふあん》とが、前の二|倍《ばい》になって自分の胸《むね》におしよせてきた。
たった一つののがれ道だと思ったガラスまどは、くまの大きなからだで、すっかりふさがれてしまったのだ。自分とくまは、さっきとはまったく、あべこべになったわけだ。自分はまるでくまのおりへ入れられたようなものだ。
さっきまでは、とにかくにげられそうな希望《きぼう》があった。まどへ両手《りょうて》をかけてさえしまえば、飛越台《とびこしだい》の要領《ようりょう》ででも、どうにか制動室へからだを運
前へ
次へ
全22ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
木内 高音 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング