お部屋《へや》の中はしいんとして、夜《よる》が、だんだんふけていきました。
 しばらくすると、屋根の上に、みしみしという足音が聞えました。イヌは、はっと目をさまして聞耳を立てました。オウムは、ずっと、ねないで、まっていたのです。
「掃除はきれいに出来たかな。」
 サンタクローズのおじいさんは、こう言いながら、えんとつの上にいたネコを背中にしょって、すらりと、お部屋へ下りて来ました。そして、ポケットから、かきつけを出して、
「ええッと、よし子さんは何がほしいのだったかな。」と、言い言い読みかえしました。
「私《あたし》の歩き人形にはお靴《くつ》を二つ。
 白い熊《くま》ちゃんには毛皮の帽子を。
 ネコにはちりちりと鳴る鈴を。
 イヌにはぴかぴか光る首輪を一つ。
 オウムにはあたらしいうたのふし[#「ふし」に傍点]を
 それから、私《あたし》には……」
 サンタおじいさんは、そこでつまってしまいました。暗くて字がよく見えないので、かきつけを眼のそばによせて、
「はてな、よし子さんのほしいものは何だったっけな。」と、おじいさんは考えこみました。
「小さな金のくびかざりです。」と、イヌ
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