へまで送り出すって、新聞に書いたある。それやのに、この餓鬼が、屁理窟並べやがったさかいに……こら慎作、未練やないぞオ、お父っつぁんが、一人で苦労してばくち[#「ばくち」に傍点]みたいなものに手を出しよったのも、みんな、お前のせいやぞ」
祖父は喋り乍ら、日頃からの不平不満に一時に火が付いた様に熱して行った。裄、丈、の短かい浴衣が、憤怒を嗤うように枯れた全身にまつわりついていた。
「さ、違うなら違うと言うてみい、こら、なんぜ黙ってくさる、返事せんかい、この罰あたりめ、この先、この一家はどうして暮らすのか言え。これでも貴様はまだ、十五円の月給仕事仕腐さる気か※[#感嘆符疑問符、1−8−78] 改心するなら両手をついてあやまれ。こ、こら、慎作、なんで寝転びやがる! この阿呆、年寄やと思うて馬鹿にする気か、こん畜生※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
堪え兼ねた様に祖父は立上ろうとしたが、利かない体は無闇な威勢を裏切って、つつかれた達磨の様に尻餅をついてしまった。
その夜、父は帰らなかった。
明け方、心配の余り、町の田村[#「田村」に傍点]まで迎いに行こうとした慎作は、裏の田で、軍鶏《し
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