し候ひし小生あの夜の実験以来、驚きと喜びとの余勢、一種のインスピレーションやうのもの存続いたし候《さふらひ》て、躰にも多少の影響なきを得ず候ひき。
彼《か》の事ありてこのかた、神に対する愛慕一しほ強く相成申候《あひなりまうしさふらふ》。如何《いか》にすればこの自覚を他に伝へ得べき乎《か》とは、この頃の唯一問題にて候也。一面にはこの自覚、人に知られたしとの要求|有之《これあり》候へど、他の一面には、更に真面目《まじめ》に、厳粛に、世の未だこの自覚に達せず又は達せんとて悩みつゝある多くの友に対する同情を催起いたし居《をり》候。この事によりて、小生幾分か、釈迦《しやか》の大悲や、基督《キリスト》の大愛を味ひ得たる感有之候也。
本年のうち小生はこれと併《あは》せて三たびほど触発の機会を得申候。他の二つの場合(前に陳《の》べたるものを斥《さ》す)も今|憶《おも》ひ出だし候てだに心|跳《をど》りせらるゝ一種の光明、慰籍《ゐしや》に候へども、先日御話いたしし実験は、最も神秘的にして亦《また》最も明瞭に、インテンスのものに候ひき。君よ、この特絶無類[#「特絶無類」に傍点]とも申すべき一種の自覚の意《こ
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