この森然たる眼前の景を観たり[#「吾れは天地の神と偕に、同時に、この森然たる眼前の景を観たり」に白丸傍点]てふ一種の意識に打たれたり。唯だこの一刹那の意識、而《し》かも自ら顧みるに、其は決して空華幻影の類《たぐ》ひにあらず。鏗然《かうぜん》として理智を絶したる新啓示として直覚せられたるなり。予は今尚ほ其の折を回想して、吾れ神と与《とも》に観たり[#「吾れ神と与に観たり」に傍点]てふその刹那の意識を批評し去る能はず。
 終はりに語らんとするもの、是れ曩《さき》に驚絶駭絶の経験と言ひたるものにして、これまで予が神の現前につきて経験せるもののうち、かくばかり新鮮、赫奕《かくえき》、鋭利、沈痛なるはあらじと思はるゝ程なり。予は今なほ之れを心上に反覆再現し得ると共に、倍々[#「々」は、底本では踊り字の「二の字点」]《ます/\》其の超越的偉大に驚き、倍々[#「々」は、底本では踊り字の「二の字点」]其の不動の真理なるを確めつゝあり。左に掲ぐるは、当時の光景を略叙してさる友に書き送れる書翰《しよかん》の大旨なり。
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藪《やぶ》から棒に候《さふら》へども、いつぞや御話しいた
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