の奕々《えき/\》たる触発の場合は、幾《ほと》んどあらざりし也。その是れありしは、昨三十七年の夏以後の事なり。今後は知らず、昨一年は予の宗教的生活史に於ける、謂《い》はば、光耀《くわうえう》時代、啓示時代なりきとも見るべく、予は実に昨一年間に於いて、不思議にも三たびまでもこれまでに経験したることなき稍々[#「々」は、底本では踊り字の「二の字点」]《やゝ》手答へある一種稀有の光明に接したるなり。而して其の最後のものを以て最も驚絶駭絶とす。
 最初の経験は昨年七月某日の夜半(日附を忘れたり)に於いて起こりぬ。予は病に余儀なくせられて、毎夜半|凡《およ》そ一時間がほど、床上に枯坐する慣《なら》ひなりき。その夜もいつもの頃、目覚めて床上に兀坐《こつざ》しぬ。四壁沈々、澄み徹《とほ》りたる星夜《ほしよ》の空の如く、わが心一念の翳《くもり》を著《つ》けず、冴《さ》えに冴えたり。爾時《そのとき》、優に朧《おぼ》ろなる、謂はば、帰依の酔ひ心地ともいふべき歓喜《よろこび》ひそかに心の奥に溢《あふ》れ出でて、やがて徐《おもむ》ろに全意識を領したり。この玲瓏《れいろう》として充実せる一種の意識、この現世《う
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