からむとす。人の世の言葉や、思想は、其《そ》の神秘的、具象的事相の万一をだに彷彿《はうふつ》せしめがたき概あるにあらずや。吾れ之《こ》れを思うて、幾たびか躊躇《ちうちよ》し、幾たびか沮喪《そさう》せり。而して今にして知りぬ、古人が自家見証につきて語る所の、毎々徒《つね/″\いたづ》らに人をして五里霧中に彷徨《はうくわう》せしむるの感ある所以《ゆゑん》を。彼等が心血を瀝尽《れきじん》して其の見証の内容を説くや、時に発して煌煌《くわうくわう》たる日星の大文章をなすことあれど、而かも其の辞|愈々[#「々」は、底本では踊り字の「二の字点」]繁《いよ/\しげ》くして、指す方のいよ/\天上の月を離るゝが如《ごと》き観あるは如何にぞや。彼等が悟を説くや、到底城見物の案内者が、人を導きて城の外濠《そとぼり》内濠をのみ果てしなく廻《めぐ》り廻りて、竟《つひ》に其の本丸に到らずして已《や》める趣きあるなり。古人にして然《しか》り、今所証の浅き予にして悟を説かんとす、説く所或《あるひ》は其の一膜を剥《は》ぎ、更に其の一膜を剥ぎ、かくして永久竟に人をして其の核心に達せざらしめんことを虞《おそ》る。されば、予は
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