だ吾が鈍根劣機を以てして、尚《な》ほ且つこの稀有《けう》の心証に与《あづか》ることを得たる嬉《うれ》しさ、忝《かたじ》けなさの抑《おさ》へあへざると、且つは世の、心洵に神に憧《あこが》れて未《いま》だその声を聴かざるもの、人知れず心の悩みに泣くもの、迷ふもの、煩《うれ》ふるもの、一言すればすべて人生問題に蹉《つまづ》き傷《きずつ》きて惨痛の涙を味へるもの、凡《およ》そ是等《これら》一味の友にわが見得せる所を如実《さながら》に分かち伝へんが為めに語らんとはするなり。あはれ、上天も見そなはせ、予は今この一個の貴き音づれを世に宣《の》べんが為めに此処《こゝ》に立てり。
わが見証をさながらに世に伝へんといふ。事や、もと至難なり。嗚呼《ああ》吾れ一たび神を見てしより、おほけなくも此《こ》の一大事因縁を世に宣べ伝へんと願ふ心のみ、日ごとに強くなりゆきて、而《し》かも如何《いか》にして之れを宣べ伝ふべきかの手段に至りては、放焉《はうえん》として闕《か》けたり。如何にしてこの目的を達すべき。顧みれば、わが見証の意識の、超絶|駭絶《がいぜつ》にして幽玄深奥なる、到底思議言説の以《もつ》て加ふべきものな
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