言をも挿《さしはさ》む能《あた》はざるを見たり。予は又この実験の、予がその折の脳細胞の偶然なる空華ならざりしかをも危《あや》ぶみて、虚心屡々[#「々」は、底本では踊り字の「二の字点」]之れを心上に再現して、前より、後ろより、上下左右、洩《も》らす所なく其の本躰を正視透視したり、而して其の事実の、竟に※[#「嵐」の「風」に換えて「歸」]然《きぜん》として宇宙の根柢より来たれるを確めたり。されど、予は尚ほこの実験の事実が、万が一にも誇大自ら欺きしものにあらざるかを虞《おそ》れて、其の後も幾度となく之れを憶起再現し、務めて第三者の平心を持して、仔細《しさい》に点検したりしが、而かも之れを憶《おも》ひいづる毎に、予は倍々[#「々」は、底本では踊り字の「二の字点」]《ます/\》其の驚くべき事実なるを見るのみ。そは到底如実には言ひ表はしがたき稀有《けう》無類の意識也。今やいよ/\一点の疑をも容《い》れがたき真事実とはなりぬ。但《た》だ予は、予が今日の分として、この実験の意義、価値の幾許《いくばく》なるかを料《はか》り知る能《あた》はざるのみ。真理の躰察、豈《あに》容易ならんや。予は唯だ所謂《いはゆ
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