のみ責むべき理由なしとするも)意や可《よ》し、言の不妥なるを如何《いかん》。
 第二[#「第二」に傍点]、今の作家が徒《いたづ》らに人生の暗処、弱処、悲惨事をのみ描きて時に詩的正義[#「詩的正義」に傍点]の大道をだに逸し去らんとするの観あるに対して、国民性を描けといふか、真意は更に人生の美所、高所、光明の側(光明[#「光明」に傍点]といふ意義の厳には如何に解すべきかは姑く別にして)をも描きて詩的正義を点ぜよと言ふにあり。此にも根本の要求点は作家の同情を広大せよ、一層客観的なれといふにあり。意や可し、言の不妥なるを如何。
 第三[#「第三」に傍点]、今の作家が自家の狭隘《けふあい》なる観察に材を※[#「蹠」の「足」に代えて「てへん」]《ひろひと》りて、其の内容の余りに吾人の実生活[#「実生活」に傍点]と風馬牛なるの観あるに対して一層吾人の関心せる、興味多き、実世間、現思潮[#「関心せる、興味多き、実世間、現思潮」に傍点]に接近せよといふか、言ひ換ふれば今一層現在の国民的生活に触着せよといふか、(所謂現思潮の何物たるかは一疑点たれど)所謂国民性を唱ふるものの意此の点に於ても是認せらるべきに
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