義其の根拠を繹《たづ》ね来たれば頗る漠《ばく》たるものあり。之《こ》れを解して、
 一、国民性の一部[#「一部」に傍点]の影を描けとの義とすべきか、
 二、国民性の全部[#「全部」に傍点]の影を描けとの義とすべきか、
 三、国民の美処[#「美処」に傍点]もしくは美なる特質を描けとの義とすべきか、
 所謂《いはゆる》国民性を描けとの要求にして以上の三解の外に出《い》でずとせば、是等《これら》は果して如何なる意義を有するぞ。吾人をして少しく之れを※[#「瞼」の「目」に代えて「てへん」]覈《けんかく》する所あらしめよ。
 試みに第一解[#「第一解」に傍点]に従はば如何《いかん》。之れを描写せよと要求するまでもなく此の意味に於《おい》ての国民性は皆多少描きつゝありと言はざるべからざるにあらずや。描いて尽くさざる所あるは、(尚《なほ》後に説くが如《ごと》き他の一面の理由もあれど)、其の主観的なるが為め、もしくは其の抒情的なるが為めにあらずや。蓋《けだ》し苟《いやしく》も我が国土に脚を托《たく》するものにして誰れか能《よ》く国民性の圏外に逸出するものあらんや。彼等は意識を役せずして皆国民性の一部を
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