だ!
 馘首を取消せ!」
 協議の結果要求が決った。この要求が入れられねば断然ストライキだ!
 そして、支部長ら幹部が翌日皆を代表して交渉に行こうと申出た。皆が承諾した。
 だが、翌朝、腕を撫で、気を張詰めて今か今かと待っていた職場の従業員の許へ、交渉から帰って来た幹部は、さも深刻な顔付でこう言ったもんだ。
「ストライキ、これは資本家に対して、解雇手当を充分取るための戦術だ。この不景気の際に、手当は充分出すと言うのだから、下手にまごつくと諸君の首も危い。それでは虻蜂取らずだ。この場合、涙をのんでストライキは思い止る方が諸君の為だ。」
 出鼻を挫かれて彼らは力抜して了った。

 が、今、窓の外に寒風に曝されている仲間を眼前に見る時、従業員達は仲間に対するすまなさに胸を緊められる思いだった。それに、何時自分達が同じみじめな姿にならないと断言できよう! 幹部の反対を押切っても一緒にストライキをやるべきではなかったか。
 その時、支部長と幹部達が出て来て、皆の前で何か喋り出した。が、次の瞬間、旗を持っていた労働者が支部長に詰寄って二言三言言ったと思うと、不意に旗の柄でぐわんと支部長を殴りつけ[
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