り付けたりした。そんな事が度重なると、彼等は百歳の家の存在をさへ呪はしくなった。部落の人達はあまり彼の家に寄り付かなくなった。
さう云ふ周囲の気分がだん/\百歳にも感ぜられて来た。さうなると彼は家に居ても始終焦々して居た。また途中で出逢った部落の人の眼の中に冷たさを感じると、自分の心の中に敵意の萠して来るのを覚えた。何となく除者《のけもの》にされた人の憤懣《いきどほり》が、むら/\と起って来るのを、彼は如何ともする事が出来なかった。
それに、彼は此の部落の出身であるが為めに同僚に馬鹿にされて居ると感ずる事が度々あった。
「△△屋敷の人間」
さう云ふ言葉が屡々、同僚の口から洩れるのを聞くと、彼は顔の熱《ほて》るのを感じた。百歳には此の部落に生れて、この部落に住んで居る事が厭はしい事になった。
そこで、彼は家族に向って、引越の相談をしたが、家族はそれに応じなかった。長い間住み慣れた此の部落を離れると云ふことは、家族にとっては此の上もない苦痛であった。それは感情的な意味ばかりでなしに、生活の上から見ても、殊に模合や何か経済上の関係から見ても不利益であったので。
さうなると、百歳は自
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