事を感じずには居られなかった。祭礼が終って、酒宴が始ってからも、誰も彼に杯を献《さ》す者はなかった。
時々、彼の同僚が訪ねて来ると、百歳はよく泡盛を出して振舞った。彼の家に遊びに来る同僚は可成り多かった。中には昼からやって来て、泡盛を飲んで騒ぐのが居た。どれもこれも逞しい若者で、話の仕方も乱暴だった。此の辺の人のやうに蛇皮線を弾いたり、琉球歌を歌ったりするのでなしに、茶腕や皿を叩いて、何やら訳の解らぬ鹿児島の歌を歌ったり、詩吟をしたり、いきなり立ち上って、棒を振り廻して剣舞をする者もあった。
おとなしい百歳の家族は、さう云ふ乱暴な遊び方をする客に対してはたヾ恐怖を感ずるばかりで、少しも親しめなかった。さうして、そんなお客と一緒に騒ぐ百歳を疎《うとま》しく感ずるのであった。
部落の人々は巡査といふものに対しては、長い間、無意識に恐怖を持って居た。そこで、初めの中こそ百歳が巡査になった事を喜んだものの、彼の態度が以前とはガラリと違ったのを見ると不快に思った。その上に彼の家へ屡々、外の巡査が出入するのを烟たがった。その巡査達は蹣《よろ》けて帰り乍ら、裸かになって働いて居る部落の人を呶鳴
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