男はさう云ふ意味の事を田舎訛りの琉球語で話して居る中に、だん/\声が震へて、終には涙が彼の頬を流れた。

「旦那《だんな》さい、赦《ゆる》ちくゐみ、そーれー、さい。」
 さう云って男は頭を床《ゆか》に擦《す》り付けた。
 部長はそれを見ると勝ち誇ったやうに、笑声を上げた。
「奥間巡査、どうだ。正に君の睨んだ通りだ。立派な現行犯だよ。ハッハッハッ」
 然し、奥間巡査は笑へなかった。息詰るやうな不安が塊のやうに彼の胸にこみ上げて来た。
 部長はきつい声で訊いた。
「それで、お前の名前は何と云ふのだ。」
 男はなか/\名前を云はなかった。奥間巡査は極度の緊張を帯びた表情で、その男の顔を凝視めた。すると思ひ做しか男の顔が、彼の敵娼の、先刻別れたばかりのカマルー小の顔に似て居るやうに思はれた。
 部長に問い詰められると、男はとう/\口を開いた。
「うう、儀間樽《ぎいまたるー》でえびる。」
 奥間巡査はぎくりとした。
 男は名前を云ってしまふと、息を吐《つ》いて、それから、自分の年齢も、妹の名前も年齢も住所も話した。さうして、彼はまた赦して呉れと哀願した。
 男は奥間巡査の予覚して居た通り、カ
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