うしたものであつたのと慥かな覺えがある。更に明日の宇宙を打消す理由を見出すことが出來ない。かくして宇宙は大歴史を展開する事實を認めざるを得ないのである。洞察すれば左樣に簡單に片附くのであるが、ヘーゲルは辯證法と名ける論理の方式を案出し、縱横に振翳して切りまくつた結果は、矢張同しところに歸着した。これも一種の微視觀であるが、事物の一應の解釋を附ける力ありとするも、科學の微視觀と違ひ、眞相を盡し、豫言を適中せしめる如き能力を發揮し得ないものである、故に信じ過ぎると易者の群に墮する。又西南獨逸學派の哲學者は特有の歴史觀を成立し、事實を一囘的と見做し、之を價値觀で操り個性を附して登場せしめたのは、宛然立役を見る樣で面白くもあり、自然に愛着、自信の念を増長せしめ、個性を強固にする效力は確に認められる。故に此説は我執を維持する武器として歡迎される資格は十二分に有る。然りと雖も歸史の本義に徴するに、事物は相對的にして變化を餘儀なくするのが眞相であらねばならぬ。實際個性の筆頭と目すべき人格、國家でさへ、價値的には怪しからぬと評すべき力によつて崩壞する事實を目撃するのである。按ずるに一囘的個性觀は科學者
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