たる理想を實現せんと努めたる結果、人々皆高きを思ひ、貴きを思ひ、利を思ひ樂を思ひ、之を求めんとして遂に罪惡を作るに至つたのである。人々は慾を煽られ罪惡を犯すに至つたとすれば、之を煽つた者は尚更深い罪惡を犯した者と見ざるを得ない。此見方を爲すことに由り安藤は聖人格の人を糞に比し、其言を聞く者を青蠅と云ふのである。又或所では自分は糞と呼ばるるも意とせず、却て聖人と呼ばるるを恥づと云ふのである。其理由は糞でも聖人より有益である。
此見方は頗る峻酷である。安藤は亢偏智[#「亢偏智」に白丸傍点]を弄する者と取り免さなかつたであらうが。知らずして善意を以て爲す者と見たら免さなければなるまい。しかし知つてゐるが故に人欲を煽り己の爲めにするものありとすれば是は免すべからざるものである。聖人を擔※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]る徒にも往々此の如き者を見出すに至つては實に法世の爲めに悲まざるを得ないところである。かうした不都合も食ふ爲めの職業であつたり商賣であつたりする上に、又其所に種々祕密な關係があつたりするので、爲政者も大目で見て置かねばならない樣な所がありとすれば、法世は文化の進歩につて
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