經驗をする必要はないと見てゐる。是は實行に訴へる迄もなく考へただけで直ぐ分る。故に彼は百年を期する。又常に互性活眞の劔を懷にしながら唯之を撫するのみで、決して人に切付けない。そこに武士の情がしのばれてゆかしいところがあるではないか。敵味方ともに見傚つて貰ひ度いものである。
男女の關係の亂るることが爭鬪の端をなすのは周知のことである。是は大切なことであるから特別の扱ひを要する。安藤は性の樂は無上にして念佛の心も起らず[#「無上にして念佛の心も起らず」に白丸傍点]と云つたり、倫理を裏返しにしても解釋の付かないことを認めたりして、甚だ同情を表するものであるが、もし彼を立川派の亞流と見たり、現代無法主義の先驅者と見たりしては全く彼を冒涜することとなるのである。そこで彼は嚴肅なる一夫一婦制の主張者であることを聞いたら失望する族もあるかも知れないが、致方がないから説明する。偖て茲にm男n女ありとすれば各男各女と結付く可能性あるが故に、m男n女の混合物を想像することは、之を實驗に訴へなくとも容易である、就中一男數女或は數男一女の集團も出來る。しかし尤も坐りよき釣合を保つものは一男一女の結晶である。
前へ
次へ
全53ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
狩野 亨吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング