然性を帶びて何等誤りのないものとなるのである。而して歴史の意義は此見方よりして生じ來ることを忘れてはならない。私は今此以上に穿ぐる事は止めるが、安藤は重大なることを見落してゐたことを指摘して置くのである。そこで先づ教法の支柱を失ひ土崩瓦壞に至らんとする社會に、安藤は如何なる應急手當を施すかを見よう。
 安藤は忽ち又互性活眞を振翳すのである。法世を屠つた利劔を以て又之を活かさうとするのである。彼曰く、爭ふ者は必ず斃れる。斃れて何の益があらう。故に我道には爭ひなし[#「我道には爭ひなし」に白丸傍点]。我は兵を語らず[#「我は兵を語らず」に白丸傍点]。我戰はず[#「我戰はず」に白丸傍点]。なるほど互性のものであつて見れば相持でなければならないのであるから爭ふべきものではない。若し爭へば爭ふものの一方が斃れるか、雙方が共斃となるか、又いつまでも爭を繼續するかに極まる。共斃の場合は論外として、一方だけが斃れ、片方が殘つた場合は、互性の見方からすると意味を成さないこととなる。又いつまでも喧嘩する位なら寧ろ早く和睦して互性の實を擧げた方が道にも協ひ幸福でもあるのである。ずつと前に安藤の平和主義は彼の
前へ 次へ
全53ページ中39ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
狩野 亨吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング