運動の相對性を的確に把へ得て、其論法を透徹し、哲學者や宗教家などの夢にも思はない處に向つて飛躍を試みつつあるのである。
 今物理學のことを一寸例にした序でに、直接互性活眞には關係は無いとは云ふものの、ずつと後に引合にすることがあり、又先以て思想を徹底させ其實現を爲さしむることに由て危險が伴つて來る場合があるのを説明するに都合がよいのであるから、餘談ではあるが横道に這入る。物理學と云へばこれ以上正確な知識は望まれないもので、精神科學も將來その前に屈服する時期が來るであらうし、救世の實も始めて此學問に因て擧げらるる事と思はせらるるのであるが、普通の頭には這入り難いので左程には採られてゐない樣だ。しかし其知識を正確ならしむるために幾多の學者を犧牲にした事などは、軍事界や宗教界などに比らべて數が少ない樣であるから云はずもがな、之を實際に應用するに及んでは驚くべき效果を奏して、汽船、汽車、電車、自働車を走らせ飛行機をも飛ばせて、實に人世の便利此上もない。同時に又人には怪我をさせるし轢殺しもする墜落もさせる、物騷な次第である。是は是れ文明の利器ではあるが、甚だ危險極まるものと云はざるを得ない。その
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