り出した。山の中の五人の頭の上で、星がやたらと光りだした。寒さはようやく強くなって風が時々音をたてる。自分はリュックサックから用意の毛皮を出して着た。顔も包んだ。手袋をとると烈しい寒さが分る。パンを出し闇の中で頬ばりながら、さあ一晩中歩いてもいいと思った。もどって道らしいところを左へ行くと「孝ちゃん滝あるよ」とウ氏が叫んだ。滝は滝でも、目じるしの滝ではなかった。再び下へ下ることになった。もどりながら「一晩中テレマークしましょう。僕らの立派な身体、こんなことでこわれません」とウ氏がいった。あたりは暗かった。ただ雪あかりで僅かに周囲が見える。沢は黒ずんで見えた。「ヤーホー」という叫び声を闇にもとめて滑ると、初めは小さく見えた小さい塊が急に大きくなってくるとステンメンをして近づく。ヴンテンさんに追いつくことも、木にぶつかることもある。小さい木はすべて股の下へ入れる。やたらと滑って行くと右手の沢を越えて、下の方の谷に、あかりが見えた。「高湯です」と孝ちゃんが歓喜の声をあげた。しかしとても右手の沢は渡れない。水の音を聞きながら、しゃくにさわった。左手からも沢が迫っている。わが行手は二つの沢に挟ま
前へ
次へ
全22ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
板倉 勝宣 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング