に 雪しきりに降る
ああ夢に見し シベリヤの停車場
駅長室に入れば 燃ゆるストーブ
こごえし身も心も 今はとけぬ
松方はいう 気持ちのいい停車場
ウインクレル氏はいう ウィーンの停車場のよう
ストーブをかこみ パンをかじれば
電信器の音は 唯一つの浮世のおとずれ
再び山へ山へ 雪をけってスキーは進む
さらば谷よ わが愛する峠駅よ
ステムボーゲン
先頭の影 谷に吸わると見れば
もちかうる杖のおちつき
ドッペルシテンメンの身体ののび
投げあげし パラシュートの開くごとく
落ちると見えし身体 ひらりと変り
美わしきカーブの跡 彼の姿は崖に消えぬ
二十秒 三十秒
あれ見よ下に 小さくあらわれしあの影を
ああ彼見事に下りぬ わが胸は跳る
いざおりん
もちかうる杖の喜び 山足にうつる重心
つばめのごとき身体のひらき
下りきりて崖を仰げば 日にてらされし
ボーゲンの跡
優美なるそのカーブ わが胸は跳る
直滑降
足をそろえて身体をのばせば スキーは飛ぶ
真白き天地を かの山越えて
天に登るか わが行手何ものもさえぎらず
耳をかすむる風 スキーより
前へ
次へ
全22ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
板倉 勝宣 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング