上る雪煙
わがあとを人が追うか ふりむけば飛ぶ雪の影
ああわれは天に行く

    テレマーク

雪を飛ばして行く 直滑降の後ろ姿
ひざまずくと思えば さっとたつ雪煙の中
側面の彼の姿 雪をきるスキーのきっさき
消え行く雪煙のさなかに 立ちあがる彼が得意の姿

    停車場より温泉へ

星のみだるる北国の空
       雪の上をチョロチョロ走るものあり
谷水の音聞きつ 星を仰ぎつ
       四つんばいの怪物
スキーをかつぎ 雪の上を走る
北極の熊か 北の里に住む怪物か
その後に 驢馬のごとき男、もぐらのごとく雪をかく
宿屋の番頭 スキーに乗り提灯をもちてくる
せんべいを出し 何枚入れましょうといえば
四つんばいのまま 二枚々々と呼ぶ
二枚いれますといえば 口をアンとあく
宿のあかり見ゆるに ここより何町と問う
二間ばかりはいずりまた ここより何町と問う
玄関はどこだいという 番頭驚き逃げれば
他の番頭きたる 一の番頭二の番頭
  ことごとく へいこうし
スキーを置けといえば 金ものがさびるよという
あつかましき怪物 後の驢馬 げらげらと笑う
うすきみ悪き怪物 百鬼夜行雪の上をは
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