きに立って路をつけて行くと後の者は一列になってその跡を登って行く。急だから一歩一歩眼界が広くなった。前に見える鉢盛山の左手には鋭い山や丸い山の頭が連って見える。その端はいま登っている山のつづきの大きな雪の山でさえぎられている。その山から今登っている山との間にさっきのいいスロープがある。真白なためにどこでも滑れそうだが大変急だ。先頭のウ氏が遠く聳えた鋭い山を指して「あれも登りました、七面山です」という。登る山はいくらでも控えている。残念だがまだどれもわが足の下に踏んだことがない。いまに見ろと力んでも実際登らないんだから駄目だ。少し進んだ時前にいた新米のドイツ紳士が「少し落ちましょう。愉快ですね」といった。滑り落ちるんだから落ちましょうは大できだ。今度は右に谷を控えた山の腹を下るのだが、かなり急に上に曲って下りられそうもない。先頭は相変らず見事に二町程先で止った。その後は大抵雪に埋まってしまった。やがて自分の番なので決心を固めて滑り出すと、果して大変速くなった。みんなのスキーが遅くなる辺でもこっちのスキーは大変な勢いだ。たちまちみんなが留っているところへきた時はとても止らない。前を見ると十
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