ね。マンメリイは先刻《さっき》の言葉を、Penalty and danger of mountaineering. っていう章のところで、山登りの危険を詳しく論じてから言っているんだぜ、山登りにはかくかくの危険がある。そしてそれはかくかくして避け得られるし、勝ち得られる。けれどなお登山者の不幸は絶対には避け得られない、と言ってその後へ先刻の言葉をもって来ているのさ。ワンデーだってそうだろう。『山とスキー』に、「人力の及ぶかぎりの確《たしか》さをもって地味に、小心に一歩一歩と固めてゆく時にはじめていままで夢にも知らなかった山の他の一面がじりじりと自分らの胸にこたえてくる」って書いていたじぁないか。おそらくそうやって行って、それでもやられちゃったんだ。そこまでゆけば、あとは運命さ、なんて言ったって俺は運命だと思うよ。だから、そういうようなやつら[#「やつら」に傍点]にとっちゃあ、山登りは趣味だの、またスポートだのって思ってはいないかも知れないぜ。」
答えたひとりは、熱心に、疲れることなく言った。
「スポート、趣味、勿論そうじぁないだろう。俺だっていま現在、俺の山登りはスポートだとも思って
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