て、杜甫《とほ》の詩を引証し、伽羅千代萩《めいぼくせんだいはぎ》の文句を引証し、其「コーデーション」の意外なる所に出づるを以て世を驚かしめたりき。夫れ水上の藁《わら》何か有らん、然れども其流るゝ方向は即ち水の方向なりとせば、一片の藁も亦意味を有するなり。読書之楽何処尋、数点梅花天地心。彼れは此中の消息を解する者なり。而して田口君は此点に於て太《はなは》だ蘇峰氏に似たり。彼は火災保険生命保険の必要を論述せんとして曲亭馬琴の夢想兵衛を引き、日本に於ける金銀価格の歴史を論ぜんとして先哲叢談に朱舜水《しゆしゆんすゐ》が日本金価廉也、中国百[#二]倍之[#一]といへるを引けり。所謂《いはゆる》眼光紙背に透《とほ》る者、書を読む、斯の如くにして始めて書を活《い》かすべし。天下の書は何人も自由に読むを得べし。然れども読者の多くは宝の山に入れども手を空《むなし》うして還れり。人は秘密を語る者なり、然れども慧眼を具する者に非んば其秘密を捉む能はざるなり。田口君が「史海」に用ふる材料は未だ嘗《かつ》て他人の用ふる材料に異ならざるなり。然れども一たび田口君の手を歴《へ》れば新しき物となりて出で来るなり。ミダ
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