まい》なるは理想の賊なり、難解の語は詩人の賊なり。今の純文学を以て自ら任ずる者、漫に高壮、美大を称して、而して其言雲煙の漠たるが如し。彼れ明かに何物をも見ずして、強ゐて辞句の間に人を瞞せんとする乎。
形と色と辞令とは人に満足を与ふる者に非ず、人は理想と教訓とを求む。
詩人の材ありて、而も伝はらざる者は、時世を解せず、人心を解せざるに因る。天禀《てんぴん》余ありて脩養足らざれば也。
非談理
談理は詩人の敵なり。詩人一たび道理を説けば終に理窟に陥らざるを得ず。
若し蕉翁の什を以て禅味ありと曰はゞ可也。直ちに蕉翁は禅学を有し、其詠|悉《こと/″\》く之を繩墨として出づと曰はゞ是れ蕉翁を以て一種の哲学者とする者也。
予が殊に今日の詩人に於て甘服《かんぷく》する能はざる所ろは、一定の規矩《きく》を立てゝ人と己とを律せんとするに在り。審美の学を作りて、是を以て詩界の律令と為さんとするに在り。知らずや宇宙は卿曹の哲学に支配せらるゝが如き狭隘《けふあい》なる者に非ず、天地の情、乾坤《けんこん》の美は区々たる理論の包轄し得べき者に非るを。
曰く写実《リアリスト》、曰く理想《アイ
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