処女|妊《はら》みて子を生まん」其名は天地を讃《たゝふ》る者、人生を慰むる者。
果して然らば詩人は終に論ずべからざる乎、何ぞ其れ然らん。天|如何《いか》にして詩人を生ぜし乎、是れ固より知るべからざる者なり。世如何にして詩人を起す乎、是れ或は揣摩《しま》すべき者なり。上天の事、生死の事は人智の達し得べき所に非ず、世界が詩人を遇し詩人が世界に対する状態に至つては必しも知り得べからざることにはあらず。
生れたる者は多し、長ずる者は少なし、播《ま》かれたる種子は万、欝として陰を為すものは三四に過ぎず。詩人として生れたる幾多の人物は暗黒に生れて暗黒に死に、其声は聞へず、其歌は歌はれずして長《とこし》へに眠れり。遇《たまた》ま一世にもてはやされて、多く喝采せられ多く反響せられしものゝみ、天上の星の如く、歴史の長江を飾る者となりて、文学史と人名辞書に其名を止む。斯の如く一は顕はれ、一は隠るゝ所以の者は何ぞや。其|重《お》もなる理由は
(一) 一は時代の最大必要を歌ひ、一は否なればなり。
一世には一世の大希望あり、随つて大必要あり。君主|擅制《せんせい》の時代には堯舜《げうしゆん》は
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