為に化せらる。詩人は固より哲学を有す、彼れは自己の宇宙観と人生観とを有す。然れども彼れは哲学者の如く論理に因つて之を得ざるなり。彼れは論理以上の者を有す。彼れは論理の媒介に因つて天地を解釈せず。彼れは不思議なる直覚を以て直《たゞ》ちに天地と人生とを見る。彼は見る人なり、論ずる人に非ず、彼は感ずる人なり、解釈する人に非ず。斯《かく》の如くにして天地は彼れの為めに黙示となり、人生は彼れの為めに神秘となる。是に於て乎《か》、彼れの歌ふ所は直ちに人心の深宮に徹す。
詩人は多く鳥獣草木の名を知る。詩人は自然の韻府なり。然れども彼れは科学者の如くに自然を分析する者に非ず。彼れは自然の意味を知る。花鳥風月、渾《すべ》て是れ自然が自己を彰《あら》はすべき形式たるに過ぎざるを知る。彼れは物質と機関との排列として自然を見る能はず、大なる意味、不思議なる運行を遂ぐる者として之れを見る。
是に於て乎、応《ま》さに知るべし、詩人は一の奇蹟なり。彼れは学校にて製造し得べき者に非ず、他人の摸倣し得べき者に非ず。彼れは詩人として生れたり、彼れは詩人の骨を有して世に出でたり。宇宙は自己を歌ふべき者を生みたるなり。「
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