嗚呼《あゝ》、東靡西靡して其日其日の風に任する楊柳的の人物は以て今日を支ふるに足ず、天徳を我になせり桓※[#「鬼+隹」、第4水準2−93−32]《クワンタイ》夫れ吾を如何と云ふが如き、智慧は智慧の子に義とせらるゝなりと云ふが如き、信任なく、独立の思想なく、唯社会の潮勢につれて浮沈するが如き人物は、日本の国運を支ふるに於て何か有ん、心に些《いさゝ》かの平和なく、利奔名走、汲々として紅塵《こうぢん》埃裏《あいり》に没頭し、王公に媚《こ》び、鬼神に※[#「言+滔のつくり」、第4水準2−88−72]《へつら》ひ、人民をアザムク者何ぞ言ふに足らん、今日は実に矯々《けう/\》たる勁骨を以て、信仰あり、平和あり、独自ある所の男子漢を要す、女丈夫を要す、十年以前までは我「サムライ」族は実に英国中等民族の如く世界眼ある者の畏《おそ》るゝ所たりし而して今や彼等は消し去んとす此物質的文明波瀾の中に立ちて精神的文明の砥地たらんとする者は自ら重ぜざるべからず、我「クリスチァン」たる者は深く自ら敬《うやま》はざるべからず。
[#地から2字上げ](明治二十四年一月)
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山
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