青銅鬼
柳川春葉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)何日《いつ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四五|間《けん》
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 何日《いつ》だったか、一寸《ちょっと》忘れたが、或《ある》冬の夜のこと、私は小石川区金富町《こいしかわくきんとみちょう》の石橋思案《いしばししあん》氏の家《うち》を訪れて、其処《そこ》を辞したのは、最早《もう》十一時頃だ、非常に真暗《まっくら》な晩なので、全く鼻を撮《つま》まれても解らないほどであった、ふいと私は氏の門を出て、四五|間《けん》行くと、その細い横町の先方《さき》から、低く草履《ぞうり》の音がして、道の片隅《かたすみ》を来るものがある、私は手に巻煙草《まきたばこ》を持っていたので、漸々《ようよう》二人が近寄って遂《つい》に通過《とおりす》ぎる途端、私は思わずその煙草《たばこ》を一服強く吸った拍子に、その火でその人の横顔を一寸《ちょいと》見ると驚いた、その蒼褪《あおざめ》た顔といったら、到底《とうてい》人間の顔とは思われない、普通病気などで蒼褪《あおざめ》るような分《ぶん》ではない、それは恰《あだか》も
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