怪物屋敷
柳川春葉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)北豊島郡染井《きたとよしまごおりそめい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)敷石|伝《つた》い
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私が北豊島郡染井《きたとよしまごおりそめい》の家《いえ》に移ったのが、明治三十五年の春であった。何しろ滅法《めっぽう》安値《やす》い家で、立派な門構《もんがまえ》に、庭も広し、座敷も七間《ななま》あって、それで家賃が僅《わず》かに月三円五十銭というのだから、当時まだ独身者《ひとりもの》の自分には、願ったり適《かな》ったりだと喜んで、早速《さっそく》その家に転居をすることに定《き》めたのであった。一寸《ちょっと》その家の模様を談《はな》してみると、先《ま》ず通路《とおり》から、五六階の石段を上《あが》ると、昔の冠木門《かぶきもん》風な表門で、それから右の方の玄関まで行く間が、花崗石《みかげいし》の敷石|伝《つた》い、その間の、つまり表から見ると、門の右側の方に武者窓《むしゃまど》のような窓のついている長屋が三軒あって、それも凡《すべ》てこの家に附いているのだ、この長屋というのは、何《
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