ど》れもこれも、最早《もう》長年人の住まわなかったものか、床《ゆか》も壁も、ぼろぼろに頽《くず》れて、戸をあけて内へ入ると、一種嫌な臭気がプーンと鼻をつく、それ故《ゆえ》以前《まえ》に居た人なども、物置にでもつかったものらしい形跡がある、こんな風に、三軒が皆|行《ゆ》き通《とお》しのようになっていて、その中央《なか》の家の、立腐《たちぐさ》れになってる畳の上に、木の朽《く》ちた、如何《いか》にも怪し気な長持《ながもち》が二つ置いてある、蓋《ふた》は開けたなりなので、気味|悪《わ》る悪《わ》る内《なか》を覘《のぞ》いて見ると、別に何も入っていないが、その辺《あたり》には真黒《まっくろ》な煤《すす》が、堆《うずたか》く積《つも》っていて、それに、木の片《きれ》や、藁屑《わらくず》等《など》が、乱雑に散《ちら》かっているので実に目も当てられぬところなのだ、それから玄関を入ると、突当《つきあた》りが台所、そのまた隣の間《ま》というのが頗《すこぶ》る怪しいものだ、何しろ四方が凡《すべ》て釘付《くぎづけ》になって不開《あけず》の間《ま》ともいった風なところなので、襖戸《ふすまど》の隙から見ると、道
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