一つ枕
柳川春葉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)談《はなし》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一番|隅《すみ》の
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これは友人の談《はなし》だ、ある年の春の末、もう青葉の頃だったが、その男は一夜《あるよ》友人に誘われて吉原《よしわら》のさる青楼《せいろう》へ上《あが》った、前夜は流連《いつづけ》をして、その日も朝から酒を飲んでいたが、如何《いか》にも面白くない、友人に断《ことわ》って自分だけは帰ろうとしたが、友人が無理に引止《ひきと》めるので、仕方なしに、その宵《よい》はまだ早かったが、三階の一番|隅《すみ》の部屋で、一人寝ていると、外もそろそろ賑《にぎやか》になって来たようだが、自分の部屋の近所ではヒッソリと静かで、時々下の方で重い草履《ぞうり》の音が、パタリパタリと寝《ね》むそうに聞《きこ》え、窓越《まどごし》の裏の田甫《たんぼ》からは蛙《かわず》の鳴く声が聞えてくるばかりなので、つい、うとうととすると、不図《ふと》自分の部屋の障子がスーと開《あ》いて、廊下から遊女《おいらん》が一人入って来た、見ると自分の敵娼《あいかた
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