云う大金を蒐《あつ》めて、村中で一番物がたいその老人に、あずけて江戸へよこした。所が、その金を盗まれたので、申訳ないと云うための身投げでございました」
「そちが、その金を才覚してやったのか」
「五日と云う期限を切って、その間に盗み集めてやりました。御奉行さまの前ですがあのときほど、盗みが面白かったことはございません」
越前は、苦笑していたが、
「長吉よく物を考えて見よ、その老人が生命《いのち》を失おうとしたのは、その老人の金を盗んだ盗人の故ではないか。そちも、人の金を盗むことで、その人の生命を奪っていることもあるのだぞ。盗みと云うことが、悪事であると云うことがそれで分らないか」
と、云った。
長吉は、また地面に伏しながら、
「御尤もでございます。が、御奉行さまのお言葉を返すようでございますが、私は金持のお武家や町人ばかりを狙っていますので、その金で向う様が、首を吊るとか身を投げるとか……」
と、云いかけるのを越前はさえぎって、
「よし分った。そちを、再度ゆるしてやるについては、江戸お構いにしよう。そちは江戸にいることがいけない。わしの知行所である越前へ送ろう。が、庄屋へ添状をつ
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