ますと夜泣きそばが、屋台をおろしていましたので、立ち寄って一杯ひっかけましたが、そのそば屋と云うのが、十三、四の小僧でございます。うすぎたない袷《あわせ》を着てガタガタふるえているのでございます。しかも、真青なひだる[#「ひだる」に傍点]そうな顔をしているのでございます。『お前ひもじいのじゃないか』と、きいてやりますと、三日食っていないのだと云います。『じゃ、おじさんが代を払ってやるから、そばを喰いねえ』と、申しますと、商売物のそばを喰《た》べると、冥利《みょうり》がつきると申します。いろいろ事情をきいてやりますと、一人の母が病気で二年ごし寝ているが、一昨夜も昨夜も、雨で商売が出来なかったので、何も喰べさせる事が出来なかった、お客さまが、代を払って下さるのなら、家へ持って帰って、おふくろに喰べさせたいと申します。可哀そうに存じましたので、そば代を払った上に、丁度その賭場《とば》でかせいだ中から二分金を一つやりましたが、感心なことにそれを、なかなか受け取ろうとは致さないのでございますが、やっと地に投げすてるようにして参りましたが、それでも私を十間ばかり追いかけて来ましたが、及ばないと見え
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