臣として、苦心|惨憺《さんたん》の奔走をして居た柳成竜《りゅうせいりゅう》が来て、陣中に会見した。成竜平壌の地図を開き地形を指示したが、如松は倭奴|恃《たの》む処はただ鳥銃である。我れ大砲を用うれば何程の事かあらんと云って、胸中自ら成算あるものの如くである。悠々として扇面に次の詩を書いて成竜に示した。
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|提[#レ]兵星夜到[#二]江干[#一]《へいをひっさげせいやこうかんにいたる》
|為[#レ]説三韓国未[#レ]安《いうならくさんかんくにいまだやすからずと》
明主日懸旌節報《みんしゅひにかくしょうせつのほう》
微臣夜繹酒杯観《びしんよるすつしゅはいのかん》
|春来殺気心猶[#レ]壮《しゅんらいさっきこころなおさかんなり》
|此去[#二]妖氛[#一]骨已寒《ここにようふんをさるほねすでにさむし》
|談笑敢言非[#二]勝算[#一]《だんしょうあえていうしょうさんなしと》
|夢中常憶跨[#二]征鞍[#一]《むちゅうつねにおもうせいあんにまたがるを》
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 如松、更に進み、先ず先鋒の将をして、行長陣に告げて曰く、「沈惟敬|復《また》来る。宜しく之を
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