りにうつくしかったので、かわいそうになってしまって、
「じゃあ、はやくおにげなさい。かわいそうなお子さまだ。」といいました。
「きっと、けものが、すぐでてきて、くいころしてしまうだろう。」と、心のうちで思いましたが、お姫さまをころさないですんだので、胸の上からおもい石でもとれたように、らくな気もちになりました。ちょうどそのとき、イノシシの子が、むこうからとびだしてきましたので、かりうどはそれをころして、その血《ち》をハンケチにつけて、お姫さまをころしたしょうこに、女王さまのところに持っていきました。女王さまは、それをごらんになって、すっかり安心して、白雪姫は死んだものと思っていました。
さて、かわいそうなお姫さまは、大きな森の中で、たったひとりぼっちになってしまって、こわくってたまらず、いろいろな木の葉っぱを見ても、どうしてよいのか、わからないくらいでした。お姫さまは、とにかくかけだして、とがった石の上をとびこえたり、イバラの中をつきぬけたりして、森のおくの方へとすすんでいきました。ところが、けだものはそばをかけすぎますけれども、すこしもお姫さまをきずつけようとはしませんでした。白雪姫は、足のつづくかぎり走りつづけて、とうとうゆうがたになるころに、一|軒《けん》の小さな家《うち》を見つけましたので、つかれを休めようと思って、その中にはいりました。その家の中にあるものは、なんでもみんな小さいものばかりでしたが、なんともいいようがないくらいりっぱで、きよらかでした。
そのへやのまん中には、ひとつの白い布《きれ》をかけたテーブルがあって、その上には、七つの小さなお皿《さら》があって、またその一つ一つには、さじに、ナイフに、フォークがつけてあって、なおそのほかに、七つの小さなおさかずきがおいてありました。そして、また壁《かべ》ぎわのところには、七つの小さな寝《ね》どこが、すこしあいだをおいて、じゅんじゅんにならんで、その上には、みんな雪のように白い麻《あさ》の敷布《しきふ》がしいてありました。
白雪姫は、たいへんおなかがすいて、おまけにのどもかわいていましたから、一つ一つのお皿《さら》から、すこしずつやさい[#「やさい」に傍点]のスープとパンをたべ、それから、一つ一つのおさかずきから、一|滴《てき》ずつブドウ酒《しゅ》をのみました。それは、一つところのを、みんなたべてしまうのは、わるいと思ったからでした。それが、すんでしまうと、こんどは、たいへんつかれていましたから、ねようと思って、一つの寝どこにはいってみました。けれども、どれもこれもちょうどうまくからだにあいませんでした。長すぎたり、短すぎたりしましたが、いちばんおしまいに、七ばんめの寝どこが、やっとからだにあいました。それで、その寝どこにはいって、神さまにおいのりをして、そのままグッスリねむってしまいました。
日がくれて、あたりがまっくらになったときに、この小さな家の主人たちがかえってきました。その主人たちというのは、七人の小人《こびと》でありました。この小人たちは、毎日、山の中にはいりこんで、金や銀《ぎん》のはいった石をさがして、よりわけたり、ほりだしたりするのが、しごとでありました。小人《こびと》はじぶんたちの七つのランプに火をつけました。すると、家の中がパッとあかるくなりますと、だれかが、その中にいるということがわかりました。それは、小人たちが家をでかけたときのように、いろいろのものが、ちゃんとおいてなかったからでした。第一の小人が、まず口をひらいて、いいました。
「だれか、わしのいすに腰《こし》をかけた者があるぞ。」
すると、第二の小人がいいました。
「だれか、わしのお皿《さら》のものをすこしたべた者があるぞ。」
第三の小人がいいました。
「だれか、わしのパンをちぎった者があるぞ。」
第四の小人がいいました。
「だれか、わしのやさいをたべた者があるぞ。」
第五の小人がいいました。
「だれかわしのフォークを使った者があるぞ。」
第六の小人《こびと》がいいました。
「だれか、わしのナイフで切った者があるぞ。」
第七の小人がいいました。
「だれか、わしのさかずきでのんだ者があるぞ。」
それから、第一の小人が、ほうぼうを見まわしますと、じぶんの寝《ね》どこが、くぼんでいるのを見つけて、声をたてました。
「だれが、わしの寝どこにはいりこんだのだ。」
すると、ほかの小人《こびと》たちが寝《ね》どこへかけつけてきて、さわぎだしました。
「わしの寝どこにも、だれかがねたぞ。」
けれども、第七ばんめの小人は、じぶんの寝どこへいってみると、その中に、はいってねむっている白雪姫を見つけました。こんどは、第七ばんめの小人が、みんなをよびますと、みんなは、なにがおこったの
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