う、旦那《だんな》さん、勘忍《かんにん》して下さい。ホンのこの坊ちゃん達のいたずらだ。悪気《わるぎ》でしたのじゃありません。いい加減に、勘忍してあげてお呉《く》んなさい。」と、まだ眼を光らしているお巡査さんをなだめました。見ると、お婆さんは、眼に一杯涙を湛《たた》えているのです。お巡査さんは、お婆さんの言葉を聞くと、やっと吉公の手を離して、
「お婆さんが、そう言うのなら、勘弁《かんべん》してやろう。もう一度、こんなことをすると、承知をしないぞ。」と、言いながら、向うへ行ってしまいました。すると、お婆さんは、やっと安心したように、
「さあ、坊ちゃん方、はやく学校へいらっしゃい。今度から、もうこのお婆さんに、悪戯《いたずら》をなさるのではありませんよ。」と言いました。私は、お婆さんの眼の見えない顔を見ていると穴の中へでも、這入《はい》りたいような恥しさと、悪いことをしたという後悔とで、心の中《うち》が一杯になりました。
このことがあってから、私達がぷっつりと、この悪戯を止《や》めたのは、申す迄《まで》もありません。その上、餓鬼大将の吉公さえ、前よりはよほどおとなしくなったように見えました
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