三の丸前門を攻撃した。
先鋒の部将長岡式部、城中に烟が起るのを見て、直ちに前門に進撃した。
奥野伝右衛門なる士が刀を揮って門を破り開いた。前兵悉く城内へ行ったが、城の部将大塚四郎兵衛、相津左兵衛三千五百の人数で門を守って居るのと衝突した。西門を、有江掃部五百で守って居たのが、式部を見て、槍を並べて突出した。武部の軍奮戦して斥け、逃げるのを追った。
黒田忠之、同長興、同隆政は、大江門を目指して進んだが、忠之は余り急いだので甲を着けて居る暇がない。老臣黒田|睡鴎《すいおう》追い付いて諫めたので、鎧は着けたが、猶|冑《かぶと》を冠らない。
冑を冠ると左右が見えない等《など》と理屈を云い乍ら進むと、城の部将本渡の但馬五千を以て逆襲し、その勢いは猛烈である。
為に黒田勢三百余忽ち討たれて少しく郤《しりぞ》くのを、忠之怒って、中白|上下《うえした》に紺、下に組みの紋ある旗を進め励ます。睡鴎は然るに自若として牀に坐して動こうとしない。
忠之、「如水公の時屡々武功あったと云うが老耄《おいぼ》れたのか」と罵って之を斬ろうとする処に弟隆政現れて漸く止めた。睡鴎暫く四方を観望して居たが、忽ち大喝
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