鍋島の営へ、夫々粛々と進み近づくや、一斉に鬨を挙げ火を竹束につけたのを投げ込んだ。
用心はして居ても不意の夜襲であるから、黒田藩の家老黒田監物は討たれて形勢非であったが、黒田隆政自ら槍を揮って宗徒三人を突伏せ更に、刀を執って進み、「隆政これに在り」と叫んで衆を励まして漸く追い払った。
監物の子作左衛門、松炬《たいまつ》を照して父の屍《かばね》を見て居たが、自らも従士五六十を率いて突入して果てたと云う。
寺沢の陣でも騒動したが、三宅藤右衛門、白柄の薙刀《なぎなた》を揮って三人を斬り、創《きず》を被るも戦うのを見て諸士亦奪戦して斥けた。藤右衛門は、本戸の役に自刃した藤兵衛の子であるから仇討ちをしたわけになる。宗徒勢を討つこと三百人余であった。
信綱、氏鉄、夜討ちの現場を視察して、城兵の死骸の腹を割《さ》かしめて検した処が、海草の類を見出した。これによって、城内の兵糧少ないのを知ったのである。
聖旗原城頭※[#「てへん+確のつくり」、第4水準2−13−36]落之事
城中の糧食尽きたのを知った信綱は、諸将を会して攻撃の方略を議した。其頃、上使の一人として出陣した水野
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