ら、そんな気持で、申し上げているのではありませんのに……ただ、奥さまにだって、わるいし、……お子さま達にだって……」
「そんなことを貴女に考えさせていたのは、僕が卑怯《ひきょう》だからなんだ、今後、どんなことが起って来ても、僕のことで貴女にご迷惑はかけないことにします。僕は、その決心をしました。」
相手の激しさに、新子はいよいようなだれるばかりであった。
七
「さあ。もう考えないで下さい。」と、前川は明るく云いながら、我とわが心に、
(どうしたって、この人と離れるものか。どんなことがあっても頑張る、どんな手段でも取る!)と、云いつづけた。
主客転倒で、今度は新子がだまりこんでしまった。
前川は、ふと空を見上げた。昨夜が中秋であったという月夜空、雲がぐんぐんと動いていた。
「だって、どうなさるんですの。」やわらかく、新子が訊き返した。
「僕は、貴女が好きだ、絶対に別れない。今までは、僕が卑怯だったので、貴女に心配させた。これから、周囲のいかなる非難も受ける。妻とも戦います。だから、貴女は、僕の身の上について、心配することは、一切抜きにして、僕に対する一番素直な気
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