のっぴきならぬように、取って押えるには、何か物的証拠をと、探しているのだが……。
今まで、夫婦間に、何一つ隠すところのないために、どこに一つ鍵のかかっているところもない、この机こそ、こうなっては屈竟《くっきょう》のものである。袖に五つ、抽出しが付いている。その一つ、一つを、そっと、いじった形跡の残らぬように、何かないかと調べはじめた。真白な紙片の中まで、ハタハタと振ってみたりした。だが、最後の抽出しまで何物も、見出すことが出来なかった。
夫人は、少し気落ちがして、最後の抽出しにはいっているピストルや、双眼鏡や、使わない琥珀《こはく》のパイプなどを、空しく味気なく眺めながら、いつもながらキチンとボロを出さない良人の態度が、机にまで示されているような気がして、妙な苛立《いらだ》たしさを感じていた。
夫人は、その時少し疲れを覚えて、腰をおろしたが、ふと先刻二番目の抽出しに、はいっていた良人の小切手帳のことを思いついた。あらゆる問題は、金銭に関係している。そう思うと、夫人は良人の小切手帳をとり出して、バラバラめくりはじめた。
夫人は、月々経常費として、二千円ずつ良人からもらっている。も
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